第十四弾

いろんな立場の方々と”イバショ”について飲みながら考えてみた!

第十三弾 対談者:立石BASE 店主 井口雄太さん

この記事は10分で読めます。*酔っ払っていることがあります。発言の責任は問わないでください*

 

井口さん:東京の立石って町自体が居場所なんですよね。僕は、精神的に安心感のある居場所を求めているような気がしてて、なんとなくこの町好きだなーとか、けっこう町単位で見ていて。

 

:そう考える背景があったんですか?

 

井口さん:僕ずっと20年ぐらい目黒で育ってきたんですね。The資本主義みたいなオフィス街で、隣の家の人の顔を知らないとか普通で。個人がバラバラの社会で生きてきて、サラリーマンになること以外の生き方を知らなかった。けど、そういう世界は僕には面白くなくて。それよりも、地域のつながりが超濃い感じとか、「なんとなく好き」とか、そういったものを大事にできるような場所で生きたいなと。

 

:都会のご近所付き合いのなさとか、縁のなさに対する孤独感っていうのは、私の地元もそうだったのですごくわかりみが深いです。地方に行くと、人と人のつながりが強い。つながりが強過ぎることで、プライバシーがなかったりと弊害もあるんですけど。もうちょっと、都会の個人主義と地方の親密さの中庸な感じのつながりってつくれないかなーみたいなのはよく考えますね。希薄過ぎても寂しいし、つながり過ぎても窮屈だし。

 

井口さん:僕も似たようなことを考えていて。立石っていう町は、そんな希薄さとプライバシーのなさが混合している良い町だなって思っています。みんな知り合い。『男はつらいよ』の寅さんの世界観。例えば、うちの近くに「倉井ストアー」さんっていう、飲めるスーパーがあるんですよね。

 

:飲めるスーパー?

 

井口さん:冷蔵庫から勝手に酒取って、席に座って飲めるんです。惣菜も勝手に取って、これ温めてくださいって言ったら温めてくれて。あと、立石BASEって場所がわかりにくいじゃないですか。どこかわかんないよってお客さんが、倉井ストアーに聞きに行って、主人がウチまで連れて来てくれるっていう。

 

:優しい!都会のスーパーとか行っても、多くは機械的な感じで、雑談とかコミュニケーションって生まれないじゃないですか。

 

井口さん:うん。倉井さんには本当に申し訳ないっていう前提なんですけど、つながりって、便利過ぎるとどんどんなくなっていくじゃないですか。この町はけっこう不便で、スタバとか何もない。その不便さが、僕けっこう好きで。ここに住みながら、極力働いているという意識を持たずに生きたいなぁってことで(笑)。

 

:いやすごいですね、働きたくないと言いながらカフェ開いちゃうあたり。

 

井口さん:なんか目標を立てるとまったく動けなくなっちゃうんです。だから多分、カフェやりたいってすごい強い想いを抱いていたら絶対できてなくて(笑)ノリですね。ノリ。

 

:すごい(笑)私も大きい目標を持つと自信なくす方だからわかる気がするけど、確定申告とか事業申請とか面倒くさいじゃないですか。

 

井口さん:いやそれはマジで(笑)でも、例えばすごい実家が金持ちだったりとか、高学歴だったりとかすると、そういうものを守ろうとする動きがあるじゃないですか。それで身動き取り辛くなるみたいな。その逆に、守るものがない人って、時間と精神的な余白があれば、ノリで今日だけのことを考えて生きれる(笑)

 

:守るものがないから動けるんですね。

 

井口さん:立石って、歴史的に見ても労働者の人達がたくさんいて、ウイスキーが高価だから焼酎ベースのハイボールに、安い豚モツ。背景はそういう貧乏な町なんですよ。だから、経済中心の価値観じゃないところにすごい強みがあるなと思ってて。たぶん僕達の世代って、バブルの世代ほどお金ないじゃないですか。これからも人口減っていくし、経済縮小していくわけじゃないですか。この町は今後の最先端の町になるなって。お金がなくても幸せに生きれる方法は、そういったところに色々隠れているんじゃないかなと思うんです。

 

:だんだんお金に価値を置く人が少なくなっている。高価な物とか、ブランドとか車とか、そうじゃなくてもっと精神的なつながりを求める人が増えているんじゃないかなっていうのは感じますね。

 

井口さん:そうですね。立石が好きな人ってすごく多くて。僕の行きつけの居酒屋定食屋みたいなところのおばあちゃんが、「立石以外住んだことないけど、立石は世界一いい町なのよ」って言ってて。「なんとなく好き」みたいな想いが、居場所に関しても大事なんじゃないかな。

 

:確かに、幸せを追求する中で、どこに住むかっていうのはすごい比重が高いと私は思っていますね。私も自分の地元に思い入れはないんです。住んで良かったなと初めて思ったのが、神奈川と東京の境目あたりで一人暮らししていた時。公民館に卓球しに行ったら、地域のおじいちゃんおばあちゃんが、一緒にやりましょうって声かけてくれたりとか。

 

井口さん:それ超和む!

 

:そう!地元とはぜんぜん違くって、そういうコミュニケーションが多かった。住む場所ですごく幸福度が違うなっていうのを、一人暮らししていた時に学びました。私が一番怖いのは、孤独死なんですよ。

 

井口さん:ええー!今から考えているんですか。

 

:ずっと考えてた!結婚の予定もないし、兄弟もいないから、これは孤独死もありえるなって。だから、孤独にならないような居場所欲しいなあって思うんですね。孤独感とかって普段あんまり感じないですか?

 

井口さん:孤独感は感じないですね。旅してからけっこう考え方が変わって。いざとなったらこう生きりゃ良いやみたいな、最低レベルが下がった感じがして。別に今この家がなくなっても、僕ぜんぜん生きていけると思うし、行く場所も行く当てもいっぱいあるから、それが僕の中で孤独を感じさせない要素の一つになってるのかなと思いますね。普通に外で寝たりとかもできるし。

 

:それは強いですね。

 

井口さん:あと、お金なくても生活できる。ピアノと電池があれば。

 

:路上ライブ!

 

井口さん:そうそう(笑)一箇所に迷惑かけ続けると、すごい申し訳ない気持ちになるし、相手も負担になってくるじゃないですか。だから、「一週間迷惑かけますよ」を100ヶ所持っていたら、100ヶ所生きられるじゃないですか。そういう依存先を増やすことを自立って言うんじゃないかな。

 

:依存先を増やすのは重要だって、私も自分の本に書いた気がします。自分の場合、依存先とか理解者が5人以上は絶対必要だっていうふうに思っているんですね。5人より減ったら死活問題だと思ってて。

 

井口さん:めちゃくちゃ具体的な数字ですね。

 

:これは、今まで生きてきた中での肌感覚の数字で。自分にとっては5っていう数字がすごく重要。だからね、依存先を増やすっていうのはすごくわかる。わかるけど、どうやったら依存先が増えるのかっていうのにすごく悩みます。

 

井口さん:人や場所だけじゃなくて、芸術だったり、働き方やお金の稼ぎ方、そういったものも依存先になりえるなって思って。例えばさおりんだったら、発散するために絵描くじゃないですか。

 

:描く。ストレス発散できる趣味とか、表現する方法ってことですね。

 

井口さん:あと、新たなことを始めると、知らない世界がぶわって広がる感じがあって。例えば、コーヒーの焙煎を始めたら、焙煎士の人と交友が広がったりとか。音楽活動していたら、ミュージシャンの友達増えたりとか。そうやってどんどん稼ぎ方なり表現の方法なり増やすと、自分の知らない面白い世界がどんどん広がっていく気がしてて。ご縁の中で生きることは、僕大好きですね。

 

:なるほどですね。私は腰が重い方だから、ミーハーなところは見習わないとなぁと思います。

 

井口さん:でも、人って結局、ないものねだりじゃないですか。僕から見たら、さおりんってもう才能の塊過ぎて、そんな悩むんだーみたいな。

 

:めっちゃ悩みますよ!たぶんね、私はその最低限レベルが高い。本業の手取りも15万円ぐらいで、ヤベェって思ってますもんね。

 

井口さん:15万ってことがヤベェって思ってるんですか?

 

:ヤベェですね(笑)老後のことを考えたりとか。

 

井口さん:僕たぶん10万円とかですよ(笑)

 

:本当ですか!ヤベェと思わないんですか?

 

井口さん:ぜんぜん思わないですね!(笑)

 

:それはヤベェわ(笑)リスペクトの意味でね。

 

井口さん:下には下がいるので、どんどん見下してもらえれば(笑)こんなに金がなくても、自信満々に金ねぇって胸張って言ってる人もいるんだみたいな(笑)

 

:処世術を教えてほしいです。

 

井口さん:別に借金抱えても自己破産すれば大丈夫だし、生活保護あるからお金なくなっても生きていけるし。ぜんぜん悩むことがないですね。

 

:すごいわリスペクト!ちょっとまだその境地には立てないんですけど、それってすごい強いと思います。中には、お金がなくて自殺される方もいるじゃないですか。最近のニュースだと、東大で殺傷事件を起こしちゃったりとかありましたけども、自分の学力に悲観してね。

 

井口さん:ジョーカーみたいな人増えてますよね。あれはやっぱり、お金でそうなる人だったら、お金しか依存してこなかった人だし、学力がないことに悲観している人は、学力以外は価値がないと思ってるし。

 

:そういう意味でも、依存先を増やすのと、最低レベルを下げることが、井口さんの生きやすさの秘訣というわけですね。

 

井口さん:いやーそうなんですよね(笑)僕これまで、年収稼ぐこととか、家を持って家族を持つことが自立だってすごい考えてた人なんですけど、やっぱりなんか違いますよね。立石BASEは、一つの生き方として見てもらえれば良いなって思ってて。100人いたら100個の生き方があって当然ですもんね。さおりんって、さおりん以外になれる人って絶対いないんですよ。もう唯一無二な感が半端ない。

 

:変人とはよく言われます。この変人さがアイデンティティなので(笑)

 

井口さん:自覚あるんですね(笑)もう自分以外にはなれないって思っているんじゃないですか?

 

:そうですね、悲しいかな、他の人になりたくてもなれないですね。

 

井口さん:なれないですよね。なんか諦めみたいなもんですね。さおりんは、小・中・高校でけっこう苦労されたじゃないですか。人よりも痛みや傷が多い人。その分、傷をどう回復するかとか、その傷を背負った上でどう生きるかみたいなことを考えなきゃいけないじゃないですか。大学への価値観とか、将来こうなろうとか、何か考えていたんですかね?

 

:中高での心の癒しが、絵を描くことだったんですよ。教室ではスクールカースト最下位でしたけども、美術部では王者だったんですね。だから、もう絵しか自分にはなくて。ただ絵が上手くなりたいが為に美大予備校に入って、将来どうするか考えないまま美大行って。就活の時は、まだ対人恐怖が強かったので、いかにプレッシャーが少ない職場に就職するかっていうのにはすごい力を入れていました。これは嫌だあれは嫌だって消去法で決めた仕事がコレみたいな。

 

井口さん:大事ですね、僕も消去法です。大学2年生ぐらいの時から、休学してベンチャーに長期インターン始めたんですよ。逆算思考とストイックに働くことが神みたいな環境。そこで2年間、始発から終電まで働いたりとかで超頑張ったんです。それですり減っちゃって。合わなかったんでしょうね。

 

:始発から終電って辛いですよね。私も仕事で経験しました。

 

井口さん:今の僕は、社長になって成功したいとか、そういうポジション争いみたいなものから一切離脱した人生になってて。そこからけっこう楽に生きられている感じがあるんです。

 

:大企業に勤めるとか、年収たくさん稼ぐとかっていう野望はもともとなかったですね。それよりも、いかに孤独死を防ぐかっていうのに。

 

井口さん:昔からそれは変わらないんですね(笑)

 

:変わりません(笑)辛い時に、悩みを話せる人が欲しいって思いますね。

 

井口さん:それこそ、この人に話したら安心するなってところを5ヶ所ゲットすれば、じゃあ今回はAさん、次Bさんって感じで、ぐるぐる。

 

:良いですね。作りたいんですよね。今度良かったら悩み聞いてください。

 

井口さん:ぜんぜん!やっぱ溜め込むのが一番きついですよね。

 

:そうですよね。良かったです、今日は依存先が一つ増えました。井口さんと話しているとすごく面白いし、なんか励まされますね。

 

井口さん:下には下がいるっていう(笑)

 

:いや励まされます(笑)

 

:嬉しいですそんな(笑)僕もさおりんと話してて、かなり共感できる部分が多くて楽しいです。共感できること多くないですか?

 

:すごく多いですし、参考になることがたくさんあって、ヤバいですね。今日の結論=「ヤベェ」。

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